「僕、恋那と綺春くんはけっこうバランス取れてていいなって思うよ」

「お世辞でもうれしい……わたしもっとがんばるね……」

「恋那は十分頑張ってるって。ちょっとは綺春くんに頑張らせないと」

「ううんでもねこの愛はもう誰にも止めらないの」

「うーん……恋那、やっぱ流石にちょっと漫画の見すぎかなぁ?」





​────なんて、偶然会った咲くんとそんな話をしながら帰路についたその日の夜。




わたしのいちばんお気に入りの少女漫画の告白シーンを読み返すと、「俺のものになって」と言ってヒロインにキスをしていた。

脳内で勝手に綺春くんに置き換えてみたら、絶妙に似合わなくてちょっとだけ笑えた。





(わたしのものになって、綺春くん)



心の中でそう呟いたのは、少し肌寒い夜のこと。