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「あ、恋那」
交差点で信号が青に変わるのを待っていると、ふと、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
ぱっと振り向けば、学ランを着た咲くんがたたたっとこちらに駆け寄ってくる。
「わ、咲くん。偶然だぁ」
咲くんと会うのはなんだか久々。三船先輩の家にお邪魔した時以来だろうか。
綺麗な顔立ちをしているし気も使えて優しいから、きっとモテるんだろうなと、学ラン姿の咲くんを見て思った。
「うん。恋那、今日はひとりなの? 綺春くんは?」
「あ、綺春くんは家の都合で今日は休みで……」
と、そこですかさず咲くんが「あれ? 名前呼びになってる」と指摘。
すっかり「綺春くん」呼びに慣れていたから忘れていたけれど、咲くんと会った時はまだ名字で呼んでいた頃だったんだっけ……。
距離感が徐々に変わっていることを第三者から言われるとなんだか恥ずかしい気持ちになる。



