……ああ、なんだ。
多分、これは夢のなかだ。
わたし、夢の中でも綺春くんのこと大好きなんだなあ。 綺春くんと両想いになれたら、なんて願望が夢に現れちゃったみたい。
「わたしの方がもっといっぱいすき……」
「……どうかな」
「んふふ、好───、」
刹那、視界が暗くなった。
言葉を遮るように重なったのは────綺春くんの影。
「……ん、」
唇に熱が伝わる。触れるだけのそれは、数秒熱を共有したあと、ゆっくり離れていった。
綺春くんの表情がよく見えない。温もりを確かめようにもだんだん瞼が落ちてきて、周りの音が消えていく。
「んん……ゆめだぁ」
「……はあ?」
「……しあわせ」
綺春くんに言ったらきっと引かれちゃうような夢だけど、あまりにもわたしにとっては幸せな夢だった。
だからどうか、このまま醒めないで。
「……寝ぼけてんじゃん、ばか」
睡魔に負ける直前、額への口付けとともに落とされたその声は、夜のなかに溶けていった。