*
それから数十秒後の話。
すぐ隣の部屋の扉の前に着いたわたしは、繋いだままの電話越しに「綺春くん、鍵開けに来れる?」となるべく優しい口調で言う。
それからすぐにガチャ、と鍵を開ける音がしたので、おじゃまします……と小さな声で言って中に入り鍵をかける───と。
「え──っ、」
グイっと手首をつかまれて、そのままわたしに抱き着くように綺春くんがわたしの身体に飛び込んできた。
「きはっ、綺春くんっ!?」
「…ごめん、でもちょっとだけ、」
パジャマのわたしと違って制服姿のままの綺春くん。
抱き着いてきた綺春くんの身体が震えていることに気づき、背中をやさしくさすってあげると、わたしの腕の中で綺春くんは息を整えた。
ドキドキと音を立てる心臓。
この音、全部聞こえちゃってるのかなと思ったら恥ずかしい。
「…来てくれてありがと、」
さらさらの黒髪が、首筋に当たって少しだけくすぐったかった。



