綺春くんは、怖いと言った。
怖くて、ひとりじゃどうにもできなくて、それで───ほかのだれでもない、わたしに電話をかけて来た。
それってつまり、わたしは今綺春くんに頼られているってことだ。
「綺春くん! 今からそっちに行くから、このまま電話切らないで!」
ソファから立ち上がり、わたしはスマホを握りしめたまま玄関に向かった。
「恋那どこいくの!? 雨だよ!?」
「すぐ隣だから大丈夫!」
「隣って、」
「───綺春くんのとこ!」
隣の家でよかった。こういう時、誰よりも早くそばに行ける。
……でも、これがもし隣の家じゃなくたっても、わたしは同じことをしたと思うんだ。
綺春くんがたすけを求めているのなら、わたしはすぐに駆け付ける。
……だって、だってね。
「綺春くん、わたしにそばにいてほしいって言ってるの!」
わたしには、そう聞こえたから。



