「アオちゃん。わたしもう帰らなきゃ」
クラスメイトの男子何人かがわちゃわちゃ楽しそうにヒットソングを歌っているのを見ながら、隣に座る親友のアオちゃんにこそっと耳打ちをする。
戸羽 蒼依だから、アオちゃん。かわいいよね、わかる。
アオちゃんは流れるようにスマホで時間を確認して、「もうこんな時間なんだね」と呟いた。
時刻は20時25分。本当は20時の門限だったところを、なんとかママを説得して21時にしてもらったんだ。
だから、なにがなんでも21時には帰らないとママに怒られちゃう。
「ごめーん、あたしと恋那、門限あるから帰るね」
いつもわたしの門限に合わせて帰ってくれるのは、アオちゃんの優しさだ。
アオちゃんが慣れたように、幹事の男子に声をかける。
それを聞いていた周りの人たちも、「気をつけて帰ってね」とか「良いお年を」とか、やさしい言葉をかけてくれた。
二人分の参加費を預け、荷物を持って足早にお店を出る。冷たい空気に、鼻がツンとした。