頭の上に何冊か当たって床に落ちた。
あんまり痛くない。
というか痛みを感じる余裕がなかった。
え、い、いま……!
かあっと熱が集中しはじめて、それが伝わる前にあわてて顔をはなした。
どこを見たらいいのかわからなくて、視線を宙に彷徨わせる。
「だ、大丈夫だった?」
堂くんはなにも言わない。
恥ずかしくて顔を見れないから、どんな表情をしているのかはわからなかった。
とにかく一瞬だったし、あえてそのことには触れないようにしよう、と。
なかったことにしようと思った。
「あっ、ごめんね、いま退くか……────っ、」
上から退こうとしたら、腰をぐっと抱き寄せられて。
乱暴に、
そしてあっさりと
────“なかったこと”じゃなくなった。



