「言ってない」
「言った」
「言ってない」
「言ったもん!」
堂くんはわたしの声が聞こえてないように本を返していく。
こうして手伝ってくれてるのはわたしがとろいから、らしい。
わたしをカイロとして使える時間が少なくなるのが、堂くん的には許せないんだと思う。
とはいえ、「手伝う」って言ってくれたときはうれしかったし、ありがたかったのに……
書架に本をしまっていく堂くんの手つきはなんとも荒々しかった。
そんな彼を見て、わたしはたじろいでしまう。
「なんで怒ってるの……?」
「怒ってない」
「うそ、だってわたしがなつめくんと話してるときも睨んで──」
「怒ってねぇっつーの」
わたしは視線をあげて、書架の上のほうに目をやった。
中途半端にはみ出した本たちがいまにも落ちてきそうで。



