「ね、だめ?」
「や、そんないきなり……」
男の子の連絡先なんて、お父さんくらいしか知らない。
ポケットにあるスマホの存在を手で確かめながら、わたしはどうしようと迷ってしまう。
「みくるちゃんは俺のこと嫌い?」
「き、嫌いじゃないよ!」
思わず声が大きくなってしまい、ボリュームを落とす。
いちばん後ろの席とはいえ、この密会が誰かに気づかれない可能性もゼロじゃなかった。
「嫌いじゃないよ……だけど、」
「うん」
「わたし、男の人とあまり関わったことなくて」
ルナちゃんたちみたいに性格も明るくない。
容姿もなんだかぱっとしない。
もちろん誰かと付き合ったこともなくて。
どうやって異性と接したらいいかわからなかった。
「堂は?」
「堂くんは、……カイロだから」
「カイロ」
「あ、ぅ…な、なんでもない」