「自分を変えるのが怖いくせに、変わりたいって思ってて。でもそれを実行できないまま、ずるずる生きてる。たぶん、いちばんカッコ悪い」


なんでほぼ初対面の柏木くんにこんな話をしてるんだろう。

それに、わたしと彼とじゃ住む世界が違う。

きっと価値観も、なにもかも違うだろう。


こんなこと話してもわかってもらえないか、

バカにされるか────





「いんじゃない」

「……え?」


予想外の言葉にわたしはすっと顔をあげる。

となりを見あげると、柏木くんはいつも通りの顔で前を向いていた。



「カッコ悪いってわかってんでしょ?それだけで上等だよ。それに無理して自分を変えようとしたって絶対うまくいかないって。人間そんな粘土みたいにできてねーから!」


軽やかに笑ってみせた柏木くんは、立ち止まったわたしに気がついて振りかえる。