でも柏木くんは当然そんな事情なんかわかりっこない。
「みくるちゃーん。みーくーるーちゃーん」
それゆえ大きな声で名前を連呼される。
わたしはひっと息を呑んで、あわてて近寄った。
「しーっ、しーっ!」
「えー?なんでさ」
「ナイフ、ナイフが背中に刺さってるから……!」
「え、なんも刺さってないけど?」
わたしの背中をちらりと見られる。
そりゃそうだ、これは女の子にしか見えないナイフなんだから。
ちくちくと肌に嫌な視線を受けながら、わたしは半ばあきらめモードでいた。
もういいや……なにか言われたら、正直に「ノートを運ぶのを手伝ってもらってた」って言おう。
それで女の子たちが納得してくれるとは思えないけど……



