「ねーなんでそんな後ろなわけ?」
一定の間隔をあけて歩いていたことがどうやら不満だったらしい。
振り返った柏木くんはどこか納得がいかないようす。
「や、お互いのためというか、なんというか……」
柏木くんはこの学校の二大巨頭のうちのひとり。
“光の王子”、と。
絶妙になんともいえないあだ名で呼ばれ、女の子たちから崇められている。
光といえば闇。
この学校には“闇の王子”も存在していた。
その人物は……まあ、あの人なんだけど。
そのことはいまはどうでもよかった。
女の子たちからの報復が怖い。
そして目立ちたくない。
このふたつがわたしの脳内を支配していた。
女の子は怖いのだ。
そして恋する乙女はもっと怖い。
柏木くんと親しげにしたらどうなるか、それは想像に容易かった。



