数分後、すべて回収できたことにほっとしながら頭を下げる。



「助かりました……ありがとうございます」

「なんで敬語。他人行儀にならないで?」


ふはっ、と笑った柏木くんはそのまま、ノートを半分以上持ってくれた。

突然のことにびっくりしていると、首をかしげられる。



「これ、教室まで持ってくんでしょ?手伝うよ」

「そんな!悪いよ、ひとりで大丈夫だから」

「大丈夫じゃないところをすでに見ちゃったしなぁ~」

「うっ、それは……」


いましがたあったことを指摘されてしまえば反論の余地もなかった。


ゆるりと柏木くんが顔をのぞき込んでくる。


「それにちょっと興味あるんだよね」

「きょ、興味?」

「みくるちゃん。前から話したいと思ってたんだ」

「ぅえ……?」


にこりと笑えば、もっと目尻が下がって。

かわいいと不覚にも思ってしまった。



「ね、いいでしょ?」


その柔らかい雰囲気に圧されるように、わたしはこくりとうなずいたのだった。