「棗でいいよ~。みくるちゃん」
柏木 棗くん。
赤茶色で前下がりのすこし長めの髪に、キリッとした眉。
耳についているピアスも大ぶりで存在感があった。
たぶん目元まで鋭かったら、もっと近寄りがたい雰囲気になっていたと思う。
そうならないのは、柏木くんがたれ目だから。
愛嬌のあるたれ目。
同じクラスだけど、話すのはこれが初めてだった。
「ずいぶんと派手にぶちまけたねぇ」
「え、あっ……」
どうやら手伝ってくれるらしい。
柏木くんがどんどんノートを拾っていくのを見て、わたしもやっと我に返る。
それからふたりでノートを拾うことに専念した。



