わたしはなにも言えなかった。
堂くんがあっち側の人間だとは思えないけど……
でも男の人と不穏な話をしてた、ってことにはかすかな引っかかりを感じた。
ほかの話は信じられないものも多いけれど、これはなんだか本当のことなような気がしたから。
直感でそう思っただけだから、なんとも言えないんだけど……
それにもし本当だったとしても気軽に聞けたりはしない。
わたしたちはそういう間柄じゃないから。
──────ピコンっ、
「……あ」
「どしたのみくる」
制服のポケットで揺れたスマホ。
こっそり画面を確認すると、そこに表示されていた名前に思わず声が出てしまった。
ルナちゃんたちの視線がいっせいにわたしに向けられる。
声をあげたタイミングがタイミングだから、
なにか堂くんのうわさを知っているのか、という好奇の目だった。
「あ、えっと……委員のお仕事!呼び出されちゃったから、ちょっと行ってくるね」
「あーうん、いってらー」
なーんだ、と目に見えてがっかりされる。
立ちあがったわたしはいそいそと教室をあとにした。