「俺はカイロを買ってこいとはひとことも言ってない」
「それは…そう、だけど……じゃあ、」
あのときの言葉はどう捉えたらいいの?
“俺のカイロになれ”
って。
もしかして、
「本当にわたしをカイロにしようとしてるの?」
「だったらどうする?」
堂くんはわたしを試すように目をほそめていた。
だれだ、宗教画だなんて言ったのは。
昨日、優しい人だなんて思ったのは。
さながら悪魔。
いじわるな悪魔みたいな人だった。
「っ、そんなの……!」
決まってる。
もちろん答えはノー。
絶対そんな無茶ぶり、さすがに受け入れられない。
……なのに。
どうしても、“いや”の2文字が出てこなかった。



