「そうだ、そうだよ。わたしちゃんと持ってきたよ」

「はあ?」

「いまから渡すから、ちょっと離して」

「やだ」

「なんで!」


離してくれないとかばん取りに行けないのに。

ぐぐぐ、と胸を押してみてもびくともしない。



「寒いんでしょ。わたし、買ってきたんだってば」

「だからなに?さっきから」

「カイロだよ、カイロ!堂くんが言ったんじゃん!」


その瞬間、込められていたすこしだけ力がゆるんだ。

しめたと思ってぐっと胸を押し返すと、案外すんなり離れてくれる。


かばんの中に手をつっこんで、数枚のカイロを取り出した。


それを堂くんに渡すと……

すぐに放り投げるように返された。




「いらん」

「なんで!」


せっかく買ってきたのに!



すると堂くんは呆れたような顔をした。