.
.
「あっ、もうわかるかも!」
「お、マジ?」
「はい、ここからはもう大丈夫です。ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げれば、遼花くんはどういたしましてと笑う。
ここからまっすぐ行けば、待ち合わせの場所にもたどり着ける。
もう一度お礼をいって立ち去ろうとすると、うしろから引き留められた。
「ほんとに聞かなくてもよかったの?」
くるりと遼花くんのほうを向く。
ポケットに手をつっこんで、ゆるりとした佇まいだった。
「なにがですか?」
「兄貴の秘密」
「ええと、秘密って自分で打ち明けるものであって、だれか他の人に訊くものじゃない、し……」
「わはは、正論ぶつけられちゃったー」
「正論っていうものでもないですけど……」
どう答えたらいいのかわからず苦笑する。
まったく知りたくないと言えば嘘になるけど、それは本人の口から聞きたいと思う。
だけど堂くんが言いたくないのであれば、わたしもべつに知らなくっていい。



