手を引っ込めようとしたとき、
「……で?」
「え?」
「ここから、どーしたんだよ」
どこか挑戦的にも扇情的にも取れる、淡い笑みがわたしの心をくすぶらせる。
「なあ。みくる」
やけに優しい声色が耳の入り口に響き、それがぞわぞわとして耳に熱が集中していくのがわかった。
さっき外されたボタンを止める余裕もなくって。
見えないように押さえていた手をゆっくり外される。
胸のなかでざわめきが広がって、鼓動が早まっていった。
まるであのとき見た夢と同じ。
だれもいない図書室。絡みあう視線。
唯一ちがうのは
堂くんの瞳に一瞬、陰が落ちたこと。
さっきからなにか、焦っているように見える。
だけどわたしにはそれがなんなのかわからなかった。
固まってばかりで、言葉を返せない。
ねえ、もうやめようよ……
なんとか声をふりしぼって、そう言おうとしたときだった。
……唇を塞がれたのは。



