「……されたの」
聞こえなかったのか、なんてと聞き返される。
意を決してわたしはゆっくりと声をしぼり出した。
「ちゅー、されたの……」
「どこに」
「どこって、口……に?」
なんで疑問形にしてしまったのか自分でもわからなかった。
「経緯は」
「え、っと……」
断片的にぽつりぽつりとよみがえる記憶を、思い出すがままに並べていく。
計画書を書いていたこと、
居眠りしていたこと(夢の内容は伏せておいた)、
起きたら棗くんがいて、好きだと言われたこと、
それから、それから……。
話していて、なんでこんな必死に説明してるんだろうと思った。
まるで弁解するように、身振り手振りを使ってまで。
「それで、こうやって……、っ!」
やってしまった、と後悔したのは堂くんに手を伸ばしてから。
あのとき棗くんにされたみたいに、頭の後ろに手を持っていって。
顔も自分から近づけちゃって。
ここまで丁寧に再現する必要なかった、と一気に恥ずかしくなる。



