「次、あまりにも見当違いなこと言ったらその口塞ぐかも」
さらっと言われたセリフ。
前にも似たようなことがあったような。
「わかった?」
すこしでも動けば触れ合ってしまいそうな距離に、どぎまぎしながらうなずいた。
ようやく解放してくれた棗くんは、またなにかを書きはじめて。
よく見るとそれは、わたしが散々頭を悩ませていた計画書だった。
「それ……」
「ん、もう書き終わるよ。一緒に職員室まで持ってこーね」
のぞき込むと、さっきまでほぼ白紙だった紙に綺麗な字が書き連ねられていた。
棗くん、字、綺麗だな……
なんて、お礼を言うのも忘れて。
ぼんやりと考えてしまう。
「ありがとう、本当に」
「うん?」
「いつも、なつめくんに助けてもらってるよね」
ノートを拾ってくれた。
カッコ悪くない、って励ましてくれた。
夏祭りにも誘ってくれて、
泣いてるわたしを慰めてくれた。
いつも、棗くんはわたしを気にかけていてくれた。



