棗くんはわたしの言いたいことを読み取るのが得意らしい。
ペンを止めて、ふっとやわらかい笑顔を浮かべた。
「大丈夫。外されたんだよねぇ、メンバーから」
「……それって」
「戦力外通告ってやつ?ひじ壊しちったー」
いきなりの告白に言葉を失ってしまう。
当の本人がまるで他人事のように言うから、もっと困惑した。
メンバーって、大会に出る選手ってことだよね?
棗くんはバスケの才能もあって、毎回スタメン入りしてる……って。
女の子たちがよく盛り上がっていた。
そこで浮かび上がったひとつの可能性に、さっと血の気が引いた。
「あのとき頑張ろうって言ったから」
「はい?」
「実行役員、一緒に頑張ろうねってわたしが言ったから、なつめくんを追い詰めて、無理させて……それで怪我を」
「あはは!思考回路どーなってんの」
わたしが最後まで言い終わる前に、棗くんは笑ってみせた。
とてもあっけらかんとしていて、なんの陰鬱さもない笑い方だった。



