堂くん、言わないで。



わたしはちょっと考えて、まだ無記名のお伽噺に目を向ける。



……シンデレラ、だよね。


演技に自信はないけど、そんなに凝った感じではないらしい、から。

ホールスタッフとして考えたらまあ……できなくもない。



「わかった。わたしがシンデレラやるね」


どきどきしながらシンデレラの欄に自分の名前を書いたけど、幸いにもブーイング等は出なかった。

よかった、とほっと胸をなで下ろす。





「じゃあ棗がシンデレラの王子やったら?」

「え?」

「えっ」


いきなりあがった男子の声に反応した棗くん、そしてわたし。

なぜかニヤニヤしているその人は楽しそうに頭の上で腕を組んだ。


これには周りの女の子もブーイング。

とくに白雪姫役の女の子がいやそうに抗議した。