堂くん、言わないで。



「じゃあ最後、シンデレラやりたい人ー?」


棗くんの声をうしろに聞きながら、わたしは黒板と向き合っていた。



白雪姫、赤ずきん、人魚姫、アラジン、桃太郎、美女と野獣、かぐや姫……


順調に役が決まっていって、あとは『シンデレラ』のシンデレラと王子さまだけ。


棗くんはいろんなお伽噺に引っ張りだこで、最終的に『白雪姫』の王子さまに落ち着いた。


わたしは裏方でもやろうかな。

料理は嫌いじゃないし、そもそも演技なんてできっこないし。


……と、気楽に考えていたときだった。





「みくるはなんもやんないの?」

「え」


突然聞こえた声に、目をまん丸にしてふりかえる。

ルナちゃんが頬杖をついてこちらを見ていた。



「実行委員だからなんかやったら?」


それは意地悪で言ってるんじゃない、って直感でわかった。


それにあれ以来、ルナちゃんたちとはいい関係を保てている……と思う。

ちょっとした会話やおはようの挨拶程度はかわせるようになったから。


だからこの質問も、純粋に疑問に思ったことなんだろう。