「俺やろうかー?」


突如として降りてきた救いの声。


それまで下を向いていたみんながばっと視線を向けたのは、棗くんだった。

ゆるりと手をあげて、わたしをまっすぐに見つめていた。



「えっ、いいの?」

「このままだったら進まねーじゃん?俺やるよ」


そう言う棗くんはまるで神さまのようだった。

なんだか後光も差して見える。


でも……棗くん、バスケ部が忙しいのでは?

前回のHRで推薦されたとき、たしか部活があるからできないと断っていたはず。


わたしのなにか言いたげな表情を読み取ったんだろう。

棗くんはにっこりと笑ってみせた。



「都合、ついたんだよ。時間もちゃんと割けるから安心して」

「それなら……お願いしてもいいかな?」

「任せてー」


立ちあがった棗くんに、クラスがすこしザワついた。



「棗くんがするならあたしやってもよかったかも」

「え、それなそれな。いまから変わってもらう?」


顔を見合わせた数人の女の子が、ちらりとわたしを見やった。