「どっちに転んでも、俺はお前と一緒にいるってこと」

「それはお情け?」

「……かもな」



かもな、って。

それでもそう言ってくれたことがうれしくて、ぽかぽか心があたたかくなる。


じつは、覚えてる。


前に堂くんが、わたしにだけ優しい人でいられたらそれでいい、って言ってくれたこと。


じつはずっと覚えてて、わたしの心の支えになってるんだよ。




まあ、と堂くんは一段とちいさく低い声を出す。



「俺が言えることじゃねーんだけど」

「え、ごめんよく聞き取れな」


「あいつにもあげた?」

「だれ?なにを?」

「柏木。これ」


視線で示されたのはマフィンだった。



「ああ、うん。ほしいって言われたから……」


調理実習後、ひとりで教室に帰っているとき。


棗くんもつくったはずじゃ?と一瞬思ったけれど。


たしかに別の班のマフィンの味が気にならないでもない。

だから棗くんのマフィンとひとつ交換した。


お昼やすみに食べた棗くんのマフィンは、紅茶が香っていてとてもおいしかった。