「傷つく覚悟がないと得られねーこともある。変わりたいんだったらとっとと変わりゃいい」


「……堂くんって」

「あ?」


「やっぱり地頭はいいよね……」

「褒めてんのかそれ」



褒めてるよ、褒めてる。


わたしとはちがって堂くんは物事の本質を見抜いていた。

それでいうなら棗くんだってそうだ。


以前棗くんに言われたことも目から鱗だったけど、

今回、堂くんが言ってくれたことに対しても鱗がこぼれ落ちた。


どっちが正しいかなんて決める必要はない。

わたしのために紡いでくれた言葉たちに涙がにじみそうになる。



「ありがとう……わたし、明日ルナちゃんたちと話してみる」

「駄目だったら慰めるぐらいはしてやる」

「そのときはハグでもしてもらおうかな」


冗談のつもりで言うと、お腹に回された手に力がこめられる。



「今じゃないよ、堂くん」

「どうせするだろ」

「ちょ、駄目になるみたいな言い方!」

「ちげーっつの」


うしろからこつんと頭をはじかれる。

指ではじかれたみたいな、かるい衝撃。