「じゃあ先生ちょっと出てくるから。──くん、安藤さんのことお願いね」
だれかの声が聞こえて、ぼんやりと目をあける。
すこしして、がらがらと戸を引く音。
だれかが入ってきたのか、出ていったのか。
わたしがいるのは保健室だった。
天井から吊されたカーテン。
真っ白なベッドに横たわっているわたし。
ああ……倒れたんだ。
ぼんやりとする頭には冷たいものが貼られていた。
「……わたし、さぁ」
視界の端でちらりと動くものがある。
そこにいることには、最初から気づいていた。
熱のせいで言葉をうまく考えられない。
だからぜんぶ、言うことにした。
「わたしさぁ、けっこう好きだったんだよ……あの放課後の時間……そうは見えなかったかもしれないけどさぁ、…好きだったんだよ」
相手はなにも言わない。
だけどそこにはちゃんといて、わたしの話を聞いている。



