1限目の予鈴が鳴った。


それを遠くで聞きながら、棗くんはちらりと階下に目をやる。

わたしもつられるように目を向けるけど。

人の通る気配はいまのところない。



「堂になにか言われた、もしくはされたんでしょ」

「なにもされてない」

「じゃあ言われたんだ」

「……言われてない」


イライラするとは言われちゃったけど。

ムカつくともはっきり言われたけど。

“嫌い”だけは、なんとか言われずにすんだ。


もちろんあれから図書室にも行けてない。

ルナちゃんたちに代わってしていた掃除も夏休みまでだった。


休みが明けて1週間。

わたしは自分のことに手一杯だったこともある。


とにかく堂くんとはもう1ヶ月近く顔を合わせてなかった。