棗くんは人差し指を宙に向けて、そのままくるりと回す。
「みくるちゃんが夏祭り、そしていま一緒にいるのはだれでしょう?」
「なつめくんでしょ?」
「もちろん。そこでちがう名前出てきたらさすがに怒る。じゃあ、いま考えてるのは?」
またしてもいきなりだった。
突拍子もない、その問いかけに。
「え?」
なんて、間抜けな声を出してしまう。
じわり、じわりと頭に浮かびつつあるその姿。
「俺といるときも、ずっと頭んなかに居座ってる男はだれ?」
「っ、……ルナちゃん」
「葛西は男じゃないでしょ」
まるですべてわかっているように、棗くんはやんわりと否定した。
わたしの頭にあるのは、もちろんルナちゃんじゃない。
あの日から一度も話してない、寒がりな闇の王子さま。
「──────……堂くん」
声に出した瞬間、その気怠げな姿がまた現れる。
もう消えてくれそうにはないほど、はっきりと。



