「え、もしかして知らない?」
「そーいうのあんま耳に入ってこないんだよね、俺。ハブられてんのかな」
ハブられてるのはわたしだ。
たぶんそういう黒い噂というか、陰鬱な話題はあまり持ちかけられないんだろう。
明るくて太陽のような光の王子に、みんな暗い話を聞かせたくないし、したくてもできないんだ。
簡単に説明した。
わたしと棗くんがデキてるって噂されてる、って。
すると棗くんはけらけらと笑った。
「まさか噂に先越されるとは思わねーよ」
「どういうこと?」
「ううん、こっちのハナシ」
にこりと笑った棗くんはわたしの涙を丁寧にぬぐってくれる。
指先にのった小さな光はふるりと震えて落っこちていった。
「でもさぁ、こんなこと言うのもアレなんだけど。ちゃんと泣けたんだね、みくるちゃんも」
「え……わたし、けっこう泣いてるよ?最近だって」
……ずっと泣いてばかりでいた。
頭をふって浮かんできた顔を消す。
何度かふったら、とりあえずはどっかいってくれた。
たぶんまたすぐ現れるだろうけど。



