麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない

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「すみません、ハーランツさん。お怪我はありませんか」

「平気です。もともと体は頑丈ですし、傷の治りも早いので。それに、場外まで飛ばせとお願いしたのは俺ですからね」


 武闘会終了後、寮へと戻る廊下で広い背中を追っていた。

 やや汗ばんだ漆黒の前髪をゆるくかき上げたハーランツさんは、戦闘モードとは別人の柔和な顔で答える。


『イグニスの動きを封じたら、俺ごと場外へ飛ばしてください』


 開戦前に耳打ちされたセリフは、予想外だった。

 試合を終わらせるためには従うしかなかったものの、道連れにしてしまった罪悪感が拭えない。


「ご迷惑をおかけして、なんとお詫びをしていいのか……忠告されていたのに、私ひとりではどうにも出来ませんでした」

「仕方がありませんよ。相手が悪かったんです。聖女様が優勝してくださっただけで、俺は嬉しいですよ」


 結果的に、その後の試合も順調に勝ち進んだ私は、Bブロックの覇者となった。

 しかし、当初の目的を果たせたものの、本末転倒な事態になっている。

 その理由はというと……。