「子猫に俺の魔法石を砕かせようって魂胆か! そうはいかないぜ!」
イグニス副団長は羽交い締めにされたまま腹筋を使って足を上げ、前方に迫る私の模擬刀を蹴り飛ばそうとした。
だが、こちらの狙いは魔法石ではない。
明らかに間合いの外で模擬刀を振りかざした私は、勢いよく空を切る。
「“場外まで吹っ飛びなさい”!」
「なにっ!?」
オレンジの瞳が見開かれ、目の前のふたりの体が勢いよくフィールドの外へと飛んでいく。
狙い通りに衝撃波で飛ばされるように見えたのか、観客席からはどよめきが起こった。
大きな土埃が上がった後、皆の視線の先にあったのは、闘技場の壁に打ち付けられて体制を崩した屈強なふたりの騎士の姿だ。
「チビが勝ちやがった! 嘘だろう!?」
「下っ端二等兵が、副団長と異端を場外に吹っ飛ばしたぞ!」
ああ、ごめんなさい。まさか、壁面を砕くほどの威力が出てしまうとは思わなかった。
砂埃まみれの師匠に血の気が引き、大盛り上がりの騎士達の歓声はやけに遠く聞こえたのだった。



