不安げに師匠を見上げると、その視線に気づいた彼は青い瞳をわずかに細めた。
「“ーー”」
艶のある声で耳打ちをされて、はっとする。
離れゆく間際、視界の端に映った余裕のある表情が、彼が冷静であると物語っていた。
「始め!」
審判の声とともに、円卓の騎士のふたりの模擬刀が交わる。
反射速度も打撃の強さも、身のこなし全てが異次元だ。
彼らについていけるわけがないが、完全に蚊帳の外でもなく、イグニス副団長は隙をついて私の胸の魔法石を狙ってくる。
「おらよっ!」
振り下ろされる剣に構えたものの、素早く間に割り込んだハーランツさんが受け止め、重い蹴りを繰り出す。
完全に“私の騎士”だ。こんなに心強い味方はいない。
試合は前例がないほど長時間に及んだ。通常ならば長くても十分ほどで決着がつくのだが、もう三十分以上剣を交えている。
観客席の騎士は、誰が勝つかで給料の賭けまで始まっているようだ。
そのとき、ハーランツさんが勝負に出た。私の守備を捨てて、イグニス副団長との距離を詰めたのだ。
しかし、動きを完全に読み切って攻撃をかわしたイグニス副団長が、まっすぐ私へ狩りの目を向けた。
ハーランツさんはとっさに自らの模擬刀を投げ、一瞬の動揺を見せたイグニス副団長の体を背後から羽交い締めにする。



