すると、呆気に取られる私をよそに、イグニス副団長は数秒肩を震わせた後、堪え切れなくなって大きな声で笑いだす。
「あっはっは! こりゃあ面白え! まさか、出場予定のない異端と真っ向から戦う機会が来るとは思わなかったぜ。最高だ」
がぜんやる気が出たように、マウントをやめて、近くに落ちていた自分の模擬刀を拾う。
イグニス副団長の標的は、完全にハーランツさんへと移っていた。
もしかして、これは三つ巴?
仲裁が入って助かったけど、もともとエントリーもされていないハーランツさんが試合に乱入するなんて許されるのかしら。
「おい、そこの。模擬刀を貸してくれ」
「はっ、はい」
観客席の前列にいた騎士に反論も許さない低い声で命じたハーランツさんは、自身の剣を借りた模擬刀に持ち替え、手に馴染ませている。
そして地面に座り込んでいた私へと手を伸ばして、優しく引き上げた後、イグニス副団長に向けて宣言した。
「俺の分の魔法石は必要ない。一連托生だ。アルティアの魔法石が割れたら、俺も落ちる」
「師弟の絆ってか? それなら、せいぜい可愛い子猫を守ってみろ」
予想外の展開に審判も動揺しているが、もはや外野の声など届かないほどヒートアップしている。むしろ、誰も止められる人がいない。
本来強い相手と戦うことを好むイグニス副団長は、ハーランツさんとの試合にワクワクが止まらない様子だ。



