お腹にひんやり冷たい風を感じて血の気が引いた次の瞬間、勢いよく重い一本の剣がフィールドに突き刺さった。
研ぎ澄まされた刃に私とイグニス副団長の驚いた顔が映り込むと同時に、柄に埋め込まれたダイヤモンドが視界に入る。
観客席の塀に足をかけ、こちらを見下ろすのはハーランツさんだ。
辺りが静まりかえり、やがて割れんばかりの騒ぎになって声が飛び交う。
「異端の騎士が、決闘を申し込んだぞ!?」
「あのハーランツ様が武闘会に出るだって!?」
ざわめく観客を気にも止めず、颯爽とフィールドへ舞い降りた彼は、投げ込んだ自身の剣を抜いてイグニス副団長へと刃を向けた。
一言も喋らないものの、その表情は冷え切っている。
「“俺の子猫に触るな”……ってか?」
「みなまで言ってやらないとわからないか?」
挑戦的に声をかけたイグニス副団長に返事をしたハーランツさんは、いつもの敬語がすっかり抜けて別人のようだ。
目の前の彼は、本当にあの紳士的で穏やかな師匠なの?
階級を持たないにしろ、ここまで高圧的なオーラを放つ彼は初めて見た。



