「双方、剣を構えよ」
模擬刀を握る両手が震えた。指先が冷たくなっていく。
「始め!」
高らかな合図が響いた途端、イグニス副団長は強く地面を蹴った。
一瞬で距離を詰められ、すんでのところで振り下ろされた剣を受け止める。
速い。それでいて、信じられないくらい一撃が重い。
やっとのところで弾くが、彼は本気すら出していないようだ。剣撃の手をゆるめずにこちらの出方をうかがっている。
不用意に言霊の魔力を使えば、勝利のカラクリに気づかれてしまう。
でも、ほかに勝機なんて……!
そんな一瞬の迷いを見抜かれたのだろう。力強い一打が私の模擬刀を弾いた。
手からすっぽ抜けて空中を舞う模擬刀に思考が停止したとき、突きを狙う姿勢が見える。
ダメだ。このままじゃ、やられる!
「“剣を放しなさい”!」
素早く彼の左手の手首を狙って蹴りを入れ、すぐに言霊の魔力を放った。
子猫にパンチされたレベルの打撃でも、観客席からは蹴りによって剣を落とされたように見えるはずだ。
しかし、彼は違った。
やっと尻尾を掴んだと言わんばかりに口角を上げ、剣を放した手で蹴り上げた私の足を掴む。



