ぞくりと震えが走った。
彼は、私のわずかな唇の動きを見逃さなかったんだ。裏取引をして勝ち上がっていると疑われている。
「脅しなんて、するわけがありません」
「どうだかな。まぁ、試合の時間になればわかる」
獲物を捕食する肉食獣のごとく鋭い視線が私を貫く。
「さぁ、来いよ。お手並み拝見だ」
『必ず、お前の秘密を暴いてやる』
かつて、城の書庫で告げられたセリフが頭に響き、危険信号が身体中を駆け巡った。
イグニス副団長は、一番避けなければいけなかった相手だ。魔力の秘密や素性の情報を狙っている。
闘技場に入場し、中央で対峙した。下っ端二等兵と副団長の思わぬ対戦に、盛り上がった観客席からも注目されている。
彼を目の前にして、恐怖すら抱いた。
前線で戦ってきた風格のある体格と好戦的な表情、そして、本気で命を狙われたら一瞬で仕留められると本能が警告するほどの絶対的なオーラに圧倒される。
今までの騎士と、格が違う。



