麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない


 けなしているのか誉めているのかわからない辛辣な評価だ。しかし、ハーランツさんがここまで言うのなら油断できない。


「わかりました。充分警戒します。では、そろそろ試合へ向かいますね」


 師匠に見送られて、観客席から裏口へと続く階段を降りる。

 石造りの廊下を進み、曲がり角を曲がったその時だった。


「わっ!?」


 突然、曲がった先にいた人物に腕を掴まれた。引き寄せられるまま胸に飛び込むと、厚い胸板に支えられる。

 私を捕らえたのはイグニス副団長だ。

 急いで体を押し返して目を丸くする私に、不敵に口角を上げる。


「ハーランツには抱っこを許しているくせに、俺には冷たいじゃねぇか。飼い主以外には懐かないってか?」

「す、すみません。急に掴まれたので驚いて……こういうからかいかたはやめてください」

「つれないな。俺はお前とお近づきになるために色々頑張ったってのに」


 頭に疑問符を浮かべたのが通じたのか、イグニス副団長は背をかがめてこちらに視線を合わせた。


「俺は、お前と対戦するためにトーナメントを引っ掻き回したって意味だよ」