やがて、牢の鍵を開けたハーランツさんに深く頭を下げ、少年は地上への階段を登っていった。
予想外の出来事が起こりすぎて、頭がパンクしそう。
「聖女様」
「ひゃっ!?」
考え込んで混乱しているうちに、背後から声がかけられる。
声の主はもちろんハーランツさんだ。
いつのまに背中を取られた? 驚きのあまり、振り向けない。
「ここでなにをしていらっしゃるんです?」
それはこっちのセリフですよ、とは言い出せなかった。
「あ、えっと、ハーランツさんがお部屋にいなかったので……」
そのとき、ふいに背後から抱きしめられる。
体が震えたものの、恐怖はない。彼に攻撃の意思がないとはっきり分かるからだ。
シャツ越しの体温と抵抗してもびくともしないであろうたくましい腕に緊張が走る。
思考がとろけそうになるほどのほんのり甘く大人っぽい香りに包まれて、息が止まった。
「俺を探しに来たのですね。お側を離れてすみませんでした。ひとりでは眠れませんか?」
「そ、そういう理由ではありません」
「見張りの剣まで奪ってくるとは、やはり、あなたは度胸のある女性だ」
伸びてきた長い指に、そっとあごを持ち上げられる。
上を向かされた先で、造形の美しい顔が至近距離に映った。
「なにか見ましたか?」


