給湯室や談話室にも彼の姿はない。もしかして、寮の外へ出ているのかしら。
プライベートの外出なら、わざわざ私に断りを入れる必要はない。どこにいるのか探して部屋を出てきてしまうなんて、本当に飼い主を探す猫みたいだ。
「急に恥ずかしくなってきたわ……帰ろう」
静かにつぶやいて元来た道を戻ろうとしたとき、テラスから、城の裏庭に横たわる影が見えた。
思わずぞくっとして駆け寄ると、夜間の警備を任されていた中堅の騎士だと気づく。
外傷はなく、ただ一時的に意識を失って地面に転がされたようだ。
「この先って、たしか牢屋よね……?」
見張りを任されていた数人の騎士がなんらかの方法で眠らせて沈められているなんて、何かおかしい。
倒れた騎士から剣を借りて、裏庭から地下へと続く階段を降りた。
地上とは違い、湿った冷たい空気が頬を撫でる。温かみのない石造りの空間は足音を響かせてしまうため、細心の注意を払って進んだ。
ザヴァヌ王は、囚人をすぐに処刑してしまう。つまり、今、地下牢にいるのは、例の少年だけ。


