麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない

**


「眠れない……どうしよう」


 夜の帳が下りてから数時間経ち、ベッドの中に潜ってもなかなか寝付けない。

 目を閉じても、牢へ連れて行かれた少年の姿が頭によみがえってくる。

 自分でもどうしてこんなに気になるのかわからないけど、胸がざわざわして目が冴えてしまった。

 カモミールティーを飲んで、心を落ち着かせようかしら。

 ふと思い立って体を起こしたとき、皮張りの大きなソファが目に留まる。

 あれ? ハーランツさんがいないわ。

 たしか、私がベッドに潜った頃は優雅に読書をしていたはずだ。風呂やトイレは電気が付いていない。

 時刻は午後十二時を回ろうとしていた。もうすぐ日付が変わる夜中だ。考え事をしていたせいか、部屋を出ていった気配に全く気が付かなかった。

 こんな夜中に、一体どこへ行ったんだろう?

 無意識に体が動いていた。鼓動が速まるのを感じて、ひとりで部屋を出る。

 就寝時間を過ぎているからか廊下に人気(ひとけ)はなく、寮の騎士達は皆、寝静まっていた。騒がしい昼間の寮とは全く別の世界に思える。