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「やっと片付いた。二時間もかかるなんて、想像以上の重労働だわ」
午後九時を回った頃、書庫の整理を終えた私は疲労困憊で廊下を歩いていた。
イグニス副団長に捕まったせいか、集中しようと思っても頭の片隅に今後の不安が残り、こんな時間までかかってしまったのだ。
すると、寮に帰る途中、大広間に人だかりができていると気がついた。
柱の影からこっそり様子をうかがったとき、身震いがするほど低い男性の声が辺りに響き渡る。
「この男を牢に繋げ。三人ほど見張りをつけろ」
高圧的で冷たい声の主は、人だかりの中心にいた。
黒の高貴な服に深紅のマントを羽織っている。偉そうに指示を出す男性に、臣下は誰ひとり逆らう様子はない。
「暴君のお帰りか。また新人の使用人がやらかしたな?」
ひそひそと野次馬達が話す声が聞こえる。
あれが、ザヴァヌ王。婚約者にしたいと使者を遣わせて、私を殺そうとした張本人だ。
噂によると、ザヴァヌ王は気に障った人間を次々と牢に放り込んで、容赦なく処刑するという。
周囲もその暴君っぷりをよく思っていないそうだが、自分が処刑されるのを恐れて口出す者がいないらしい。
もし、殺したはずの聖女が騎士団に紛れ込んでいると知られたら……!
「やっと片付いた。二時間もかかるなんて、想像以上の重労働だわ」
午後九時を回った頃、書庫の整理を終えた私は疲労困憊で廊下を歩いていた。
イグニス副団長に捕まったせいか、集中しようと思っても頭の片隅に今後の不安が残り、こんな時間までかかってしまったのだ。
すると、寮に帰る途中、大広間に人だかりができていると気がついた。
柱の影からこっそり様子をうかがったとき、身震いがするほど低い男性の声が辺りに響き渡る。
「この男を牢に繋げ。三人ほど見張りをつけろ」
高圧的で冷たい声の主は、人だかりの中心にいた。
黒の高貴な服に深紅のマントを羽織っている。偉そうに指示を出す男性に、臣下は誰ひとり逆らう様子はない。
「暴君のお帰りか。また新人の使用人がやらかしたな?」
ひそひそと野次馬達が話す声が聞こえる。
あれが、ザヴァヌ王。婚約者にしたいと使者を遣わせて、私を殺そうとした張本人だ。
噂によると、ザヴァヌ王は気に障った人間を次々と牢に放り込んで、容赦なく処刑するという。
周囲もその暴君っぷりをよく思っていないそうだが、自分が処刑されるのを恐れて口出す者がいないらしい。
もし、殺したはずの聖女が騎士団に紛れ込んでいると知られたら……!



