「それは嫌がらせではないでしょうか」
自室に戻ると、夕食の席でハーランツさんが言い放った。思いもよらぬセリフにフォークが止まる。
「嫌がらせ、ですか?」
「えぇ。どうりで最近、聖女様のペナルティが多いと思っていたんですよ。窓から様子を見るたびに走り込みをされているようですし、今日もこの後、書庫の整理を引き受けたんでしょう?」
「はい。もともと掃除担当だった方が、急にご家族が危篤になって病院に行くそうで」
「はぁ……」
額に手を当てる彼は、目を閉じて深くため息をつく。
「嫌がらせだと気付かずに、持ち前の“慈悲の心が炸裂した聖女ムーブ”でやり過ごしていたのですね」
「おかげで走るのがほんの少し速くなりましたよ!」
「……俺は褒めてあげませんよ?」
ハーランツさんはこちらを見つめながら言葉を続ける。
「ポジティブに捉えられるのは結構ですが、俺のせいであなたの肌に擦り傷が増えるのは心苦しいです」
「どういう意味ですか?」
「嫌がらせの原因は俺にあるということです。おそらく、新人騎士たちは聖女様の特別扱いが気に入らないのでしょう」



