その瞬間、“しまった”と体が凍りついた。
つい反射的に出来ると言ってしまい、後戻りはできない。
大柄な男性が席を立ち、階段を降りてこちらに向かってくる。
「そこまで言うなら、お前の腕力を見せてみろ。実技の評価が無記入である奴の入団を認めるわけにはいかない」
予想外の展開に肝が冷える。
平静を装って構えていると、男性は壁に寄せてあった机と椅子をそれぞれ片手に持って運んできた。
戸惑う中、対面する形で座った彼はたくましい腕を差し出す。
「ここでは暴れられないからな。腕相撲で勝負だ。俺に勝てたら認めてやる」
腕相撲ですって?
思わぬ提案に目が丸くなる。
腕の太さも筋肉量もまるで違う。魔王と赤ちゃんの対戦レベルだ。相手も、完全にこちらをなめているらしい。
「どうせ結果は目に見えているけどな。オルデン団長、合図をお願いします」
団長と呼ばれた風格のある男性は、茶番に眉を寄せながらも腰を上げる。
こうなってはしかたない。秘策をとろう。



