麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない



 とても広い城だわ。さすがは強国ヨルゴードの王の住まい。権力と財力の象徴ね。

 門番に言われた通り、広間には案内係のメイドがおり、順番が来るまで椅子に座って待つよう指示を受けた。

 ひとり、またひとりと控え室から消えていく中、緊張感が高まっていく。

 ああ、やっぱりドキドキする。付け焼き刃の知識で乗り越えられるだろうか。


「アルティアさま。奥の部屋へお進みください」


 ついに自分の番が来た。

 扉の前で深呼吸をして前を向く。

 怖気付いてはだめよ、ミティア。ハーランツさんにも自信満々にと言われたでしょう?

 成功するおまじないだってかけてくれた。きっとやれるわ。


「失礼します」


 ノックをすると、自然と重い扉が開いた。背丈を優に越す両開き戸の向こうは、石造りの空間だ。

 冷たく神聖な空気は、肌にピリッとくるほどの緊張感が漂っている。

 フロアは二段に分かれており、下段に椅子がポツンと置いてある。上段には黒曜石の円卓が置かれていて、十三人の騎士達が構えていた。