麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない

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「準備はよろしいですか? いきますよ? 『あなたの名前と年齢を教えてください』」

「“アルティア=ミメーヌ”と申します。歳は二十歳です」


 はきはきと自信たっぷりに嘘をつく。夜通し繰り返した面接練習の仕上げである。

 偽名は本名であるミティア=アルメーヌを並び替えたものだ。

 試験の開始時間まであと三十分を切った頃、ホテルのチェックアウトぎりぎりまで調節は続いた。


「答えにくい質問が来た場合は、とにかくハッタリでしのぐしかありません。自信満々に言えば、案外なんとかなるものです」

「そ、そうですね! 頑張ります!」


 実は、緊張しすぎて心臓が飛び出そうだ。

 ドレッサーに映る自分の姿を見てもまだしっくりこない。

 白いシャツに黒のパンツスーツ。本来は肋骨を保護するための胸部サポーターを付けて胸も隠した。

 無造作に切った髪は今朝ハーランツさんが切りそろえてくれたので、ひとつに縛れば見映えは悪くない。