うーん、逃げられない。
少しも焦っていない彼には秘策があるのかもしれないけど、ヨルゴード国に来て早々に試練が待っていようとは……先行きが不安だ。
「最終試験はどのような内容を実施するんですか?」
「ざっくりと言えば、面接です。小隊を束ねる複数の騎士長と副団長、団長が一同に会する“円卓会議”で新人の採用が決まります」
ハーランツさんの話によると、階級をなくした円卓会議ではどの騎士も平等に意見を述べる権利が与えられており、最終試験は自分の元で働かせたい新人を取り合うらしい。
「まぁ、その年によってイレギュラーな事態になる場合がありますが、聖女様ならば問題なく突破できるでしょう」
「本当ですか?」
「えぇ。俺も出来る限りサポートいたします」
見惚れるほどの微笑を浮かべ、彼はワインをあおった。
不安が残るが、やるしかない。
ここまで言ってくれるなら心配しすぎるのも良くないだろう。自分の命と故郷を守るため、この人を信じるほかないのだから。



