好きなものを好きなだけ食べられるとは夢みたい。こんな豪華な料理はサハナ国では食べる機会がなかった。
彼は優雅にテリーヌを口に運ぶ。
「これは景気付けも兼ねているので、お腹いっぱい楽しんだほうがいいですよ。明日の入団試験以降はゆっくりディナーを楽しむ余裕なんてありませんから」
穏やかな表情から不穏なセリフが飛んできた気がして、フォークを持った手が止まった。
「入団試験?」
「はい。騎士団に所属するためには、まず試験を突破しなければなりません。ちょうど、明日は最終試験なので、合格すれば、すぐに二等兵になれます」
完璧なテーブルマナーで料理を口に運んだ彼は、さらりとそう続ける。
なるほど。下っ端になるためにも、入団試験は避けて通れない道らしい。
「最終試験とおっしゃいましたか? 私、エントリーすらしていませんけど」
「そこは俺が上手くやるのでご心配なく」
「ちなみに、試験を受けずにこっそり忍び込むのは可能ですか?」
「いえ。合格率はとても低いので、試験を通っていない奴が小隊に入れば、確実にバレます」



