私はまだハーランツさんについて何も知らないし、仲間に引き入れたフリをして暗殺計画に加担している可能性も捨てきれない。
護身用にと受け取った短剣をバスルームまで持っていこうか考えていると、ソファで優雅に長い足を組んだハーランツさんがこちらを見ずに口を開いた。
「そんなに怖がらないで。俺はあなたを傷つけないと誓います。ただの取り引き相手……ビジネスパートナーだとお思いください」
心を読むのが本当に上手い。
服の中に忍ばせた短剣が信用していないと伝えるようで、迷った末に手放した。
お互いシャワーを終えて、ソファに腰掛ける。
鴨のテリーヌに、ロブスターをふんだんに使ったビスク、濃厚なチーズがとろけるラビオリがテーブルに並ぶ光景は、まるで晩餐会だ。
美味しそうな料理に目を輝かせている私に、ハーランツさんはにこやかに告げた。
「ここのホテルはデザートも豊富で、新鮮な果実がたっぷり乗ったタルトがオススメですよ」
「頼んでも良いのですか? なんだかすごく甘やかされている気がします」
「ははっ。遠慮をせずに、食べたいものを好きなだけお申し付けください」



